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静的オーバーレイ
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名もなきフォトグラファーのポートフォリオ。

「訪れた場所でちょっと良い写真を」という思いで東京の何気ない日常の風景や日本各地の景色を自分なりの視点で1枚の写真に切り取ってます。

About me

もんたび

都内で働いているITエンジニア。40代男性。
北海道の一人旅で見た美しい風景をきっかけに2019年から写真を始めました。

Award

Nothing

Camera Gear
Camera

Sony a7R III

Lenses

Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical
Sony SEL85F18

TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM

A Story of Beginnings

「幻の橋」

そう呼ばれる橋が存在することをご存知だろうか。

しばしばメディアで取り上げられる事もあるその橋は、北海道十勝地方の北に位置する糠平湖というダム湖のほとりにある。現在は廃線となっているが元々は木材を輸送する鉄道のために湖に架けられたアーチ橋で、季節や水位により完全に水没するのでこのように呼ばれるようになったそうだ。この橋に行くには車両の通行が規制された林道を通る必要があり、事前に車両通行許可申請をして車で行くか、離れた所から徒歩で行くか、あるいは地元のNPO法人のガイドツアーに参加するか、の3つしかない。

私は東京でIT関係の仕事に就いている。20代後半で現在の会社に転職して十数年の月日が経ち、近年は業務の一環で札幌に出張する機会が増えた。2019年の初夏、出張後に何日か休暇を取りふらふらと道内各地を周ろうと思いたった。特に何かを見たかった訳でもなく、なんとなくだ。どこに行こうかと事前に調べている時にたまたまこの橋の存在を知り、何故か分からないがとにかく強い興味を惹かれ、直ぐにガイドツアーに申し込んだ。

ツアー当日の早朝、10名程の参加者は集合場所で簡単な説明を受けた後に2台のバンに分乗しまずは湖畔まで移動する。車中ではリュックから一眼レフカメラを取り出して準備したり道中の風景を撮影している方が多かったが、当時の私はiPhoneしか持っておらず「せっかくの幻の橋なのに自分は貧弱な装備しかないな」と如何にも強そうな装備を纏った方々を少しだけ羨ましく思った。バンが目的地に着くと徒歩で湖の底まで下り、ダム造成時に伐採されたであろう木の切り株の間を縫って橋まで近づく。
徐々に顕になるその橋の姿は、正に幻想的であった。

約80年もの長きに渡りそこに存在し続けているコンクリート製の建造物はもはや朽ちかけており、曇天の空模様も相まって言いようのない孤独な雰囲気が感じられた。点在する切り株と幾何学的なアーチ橋というその非日常的な風景に感動し、気がつけば貧弱な装備ということなどすっかり忘れ多くの写真を撮った。一眼レフカメラが欲しいとはその時は全く思わなかったものの、この旅で以降に訪れた場所ではいつもより多くの写真を撮っていたので、きっと自分の中で写真に対する何かがこの時に芽生えたのだと思う。

その後、十勝の雄大な牧草地や美瑛の風光明美な丘を巡り日高のアイヌ民族の資料館を訪れその文化に触れるなど、とても充実した一人旅となった。そして旅の最後に新冠の海沿いにぽつんと建つカフェに立ち寄り、そこで何気なく撮った今にして思えばなんでもない一枚が自分にとっては何故かとても印象的で、撮った後も良い写真だなあと何度も見返していた。結果として考えるとこの1枚の写真がその後に本格的なカメラを購入する大きなきっかけの一つであったと思う。

旅を終えて帰京した後もしばしば撮影した写真を見るなどしてるうちに少しずつカメラに対して興味が生まれ始め、やがて写真に関するWebサイトや機材紹介の動画などを見るようになり気がつけばオリンパスのミラーレス機を買っていた。しかもまあまあの上位機種を、である。カメラ購入後の初めての撮影は東京の増上寺で開催されたとあるイベントだったが、その時は使い方も良く分からずとにかくカメラを持った他の方の見様見真似で撮っていた。その後は東京都内の他、関東近郊に写真を撮りに行っている。主には妻と二人で。余談だが、義務教育を終えた我が子は友達と遊んだりする方が楽しいらしく誘ってもついてくる事はほぼない。会社の部下や同僚にこの話をするとまるで引退後のようだと揶揄されるが、これはこれで楽しい。行きたい所に行って美しい景色や街並みを見て写真を撮り、その土地の美味しいものを食べる。素晴らしいではないか。

そして、カメラの使い方や撮り方も少しずつ覚えながら現在に至る、という感じである。ちなみに最初のオリンパスは購入して1ヶ月で妻の手に渡りソニーのフルサイズ機を中古で買い直すという経済観念の欠片も無い、おかしな、しかしある意味では普通とも言えるカメラ遍歴も持っている。北海道の一人旅が無ければきっと今も写真とカメラに興味を持っていなかっただろう。今後の大きな楽しみの一つは家族皆で幻の橋とあのカフェに行き、そして「最強の装備」で再び写真を撮ることだ。その時は我が子も一緒に来てくれる事を切に願っている。
(2019年・秋)