KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭
2024年は13のメインプログラム、
連携する公募型アートフェスティバルのKG+は京都市内で120を超える展示が行われた。
2024年は13のメインプログラムがそれぞれの 'SOURCE' を表現する。
「原点に戻るか、 新しいことを始めるか」
しばし日常を離れ、SOURCEをテーマにした作品からその問いを浴び
また日常に戻る。
「原点に戻るか、 新しいことを始めるか」
一時日常を離れ、SOURCEをテーマにした作品からその問いを浴びてきた。
KYOTOGRAPHIEの鑑賞は昨年に引き続き2回目だ。昨年は多くの感動と刺激を受けつつも時間が足りず全てのプログラムを訪れることが出来なかったが、今年は鑑賞に注力することにしてメインプログラムの各会場を巡り、合間に会場近辺の散策を行うことにした。
今回の京都旅については2月末頃から仕事の調整やホテルの手配などの準備を進めるも、前回最も楽しんだであろう娘は学業専念のため残念ながら日程が合わず、今年は妻と2人で2泊3日の旅程で望むことになった。開催初日となる4月13日から3日間かけて全てのメインプログラムと、流石に全てとは行かないがKG+も幾つか回ることが出来、さほど期待していなかった作品がとても良かったり、またはその逆、或いはふらりと立ち寄った展示で新たな発見もあるなど、今年も大変に充実した3日間を過ごすしてきた。「写真作品は自分以外の他の人と一緒に見て考えるのが良い」という旨を写真家でYoutuberの渡部さとる氏が話していたが、まさしくその通りだなと。次の会場へと向かう道すがら、この作品や会場の印象など自分が気がつきもしない意見を聞きながらぶらぶら歩くのはやはり楽しい。
今回我々が訪れた各プログラムの内容や作品、会場の雰囲気を記録する。尚、左肩に振られた番号は訪れた順となる。
Kikuji Kawada
京都に着いてまず向かったのが京セラ美術館の川田喜久治氏の「見えない地図」から。円形に仕切られたスペースが連続し、現在と過去を行き来するような見せ方が印象的。抽象的で力強く、また多重露光の暗喩を帯びたイメージが並び、初っ端から写真展鑑賞初心者の我々としては先制パンチを喰らった感じだ。
Tetsuo Kashiwada
Jaisingh Nageswaran
The Lodge by 2023 KG+ SELECT
昨年のKG+ SELECT Awardのグランプリ受賞作家。自身の出自やインドの身分制度を金魚鉢に擬えて世界に問いかける作品。たまたま作家ご本人のインタビュー動画の撮影されており、運良くその様子を鑑賞することが出来た。ただし、その内容は30%程度しか聞き取る事が出来なかったが。
Rinko Kawauchi
Supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
言わずと知れた川内倫子氏であるが、これまで写真展は訪れたことがなく今回がお初。作家の身近な方の死と新たな生命の誕生、緩やかに移ろいゆく家族のあり様を記録した写真と映像は自らの過去の体験を重ねることが出来、こちらは個人的に共感性の高い展示であった。バランス取ったのかな。
Yoriyas (Yassine Alaoui Ismaili)
Tokuko Ushioda
Supported by KERING’S WOMEN IN MOTION
川内倫子氏のお隣はプログラムパートナーである潮田登久子氏の作品。スペースの両サイドの壁に展示されたこれでもかという程の大量の冷蔵庫の写真に目を引かれる。他所様の冷蔵庫の中身を覗き見る不思議な感じと共に昭和、平成の時代を感じさせ「そうそう、昔はこんなんだったよね」と妻と言葉を交わす。どうでも良いが氏のご長女と私は同い年だ。
Iranian citizen and photographers
メインプログラムの中で個人的に最も気になっていた作品。ヒジャブの着用をめぐり道徳警察に逮捕され、その後死亡した女性を巡るイランで起きた大規模抗議デモを克明に綴ったドキュメンタリー。生々しいデモの様子を記録した映像展示を鑑賞している父子が、小学生程のお子さんに対してその内容をきちんと説明されている姿が印象に残っている。
Claudia Andujar
ダヴィ・コベナワとヤノマミ族のアーティスト
共催:京都府
Lucien Clergue
Birdhead
Viviane Sassen
1990–2023
In collaboration with the MEP – Maison Européenne de la Photographie, Paris
共催:京都新聞
助成:駐日オランダ王国大使館
まず新聞社の地下にこんなにも大規模な印刷工場があるのものかと驚いた。その無機質で機械的なだだっぴろいスペースに、作家のこれまで発表された多くの作品が展示されており、とにかく圧倒的。コンセプチュアルで抽象度の高い作品と工場跡というロケーションが相まって非日常感の高い不思議な空間となっていた。
James Mollison
タイトルの通り、世界各地の子供たちの眠る場所とその子のポートレイトを撮影した作品で貧富の差をまざまざと見せつけられる。訪れた際にはちょうどアーティスト・ツアーが実施されており、対象とした子供一人ひとりのバックグラウンドについての解説を聞くことが出来た。ポートレイトの子どもの表情と、その子の眠る場所には一定の相関関係が見て取れたのが大変興味深い。
Thierry Ardouin
In collaboration with Atelier EXB
植物の種の写真なんて面白いのか?と懐疑的であったが、実際に鑑賞してみると良い意味で期待を裏切られた作品。様々な造形の種子はシンプルに美しく、その見せ方もまたシンプルながら工夫されており世界観に没入出来る。
Yoriyas (Yassine Alaoui Ismaili)
総じて今年のプログラムは”写真”を見せるような表現が多かったように感じた。インスタレーションでいうとティエリー・アルドゥアン氏の「種子は語る」の実物の種子の展示や顕微鏡を覗き込んで見るかのような見せ方は面白いなと。個人的に一番印象に残ったのはやはりイランの大規模抗議行動をテーマにしたドキュメンタリー、Iranian citizen and photographersは刺さるものがあった。個々の作品自体から受ける感動や衝撃は個人的には昨年のほうが高かったというのが正直な感想ではあるものの、二度目の経験がその感度を鈍らせてしまっているのかもしれない。とはいえ全体を通しで見る事が出来たり、家族との繋がりを感じることも出来たのでトータルの充実感は今回のほうが高かったと言える。来年はどんな作品に出会えるのか楽しみだ。
2024.04.20
KYOTOGRAPHIE 2024
https://www.kyotographie.jp
会期:2024年4月13日(土)〜5月12日(日)